幻のミートパスタ

ちょっと自由に生きている

 こんばんは、ばんりです。
 皆様は神様にすがったことはありますか?願ったことはありますか?僕はあります。
 これは先月、熊本旅行に行った時の話です。超絶うまい、幻のミートパスタを食べてきました。幻のミートパスタに成る過程があったのでよければ寄って行ってください。

その日。

 その日は鹿児島から熊本に戻った翌日でした。僕の趣味の一つとして、神社巡り・御朱印巡りがあります。神社に溢れる雰囲気と、行き辛ければ行きづらいほど自然に溢れていて、都会では感じられない爽やかで心地よい空気感が好きなのが理由の一つです。

 数ヶ月前に、これまでそんなことは無かったのに、夢で神社に参拝しました。滝と鳥居が重なった場所でそれは熊本県でした。その後、よく分からない村の村長に肩を叩かれながら
「君はね、今年は七月が一番良いから。」
と言われ、目が覚めました。
 それがきっかけで熊本に行こうと思い立ち、その夢で見た雰囲気に近い神社を探しました。ただ、探せども探せども、滝と鳥居が一体になっている神社はどこにもありません。探している最中に「ここに行きたい!」と強く惹かれた上色見熊野座神社に行くことに決めました。

 改めてその日。一人旅で車を借りていなかったものですから、上色見熊野座神社へは電車を乗り継いで行くことに。電車で行くにはなかなかの辺境で。チェックインが前日午後11だったにも関わらず、午前四時半に起き、午前六時前にはチェックアウト。日頃早起きが苦手ながらも、やると決めたことに対する行動力は育っているなと自画自賛しながら、眠たい体とキャリーを引きずって駅へ。電車に遅れると数時間単位で後の予定が遅れていくため、朝ごはんも抜きで行きます。。加えて梅雨入りから二日後、朝から雨で傘を差しながらのスタートでした笑

目的地へ①

 南阿蘇鉄道まで行った後は30分〜1時間に一本しかこない電車に乗り、高森駅で降車。そこで出会ったおばちゃまに携帯の操作方法を教えながらバスを待ち。一日に四、五本ぐらいしかないんじゃないかっていう少ないバスに乗り、約三時間かけてようやく上色見熊野座神社に到着しました。

 ここでもしっかり雨は降っていましたが、生い茂る草木のおかげで多少雨が遮られ小雨に感じることができました。

 神社と自然を堪能し、バス停へ戻ります。逃すとまた何時間待つんだというバスですから少し焦りました。

 で。阿蘇神宮に行こうと思っていたんですが。他に面白いところないかな〜と何気なく、改めて探していたんです。
 そしたら、高森駅から数駅の中松駅から徒歩二十分ほどの場所に、見るかに、明らかにここしかないという神社を発見してしまったんですね。この辺境の地まで、また来ることがあるのは一体何年後だ?と思い、これもまた運命!と意気揚々と目的地を変更しました。

 帰りの高森駅はなぜか海外の観光客でいっぱいで。きた時の閑散とした雰囲気とは打って変わった表情に驚きました。
 偶然にも朝あったおばちゃまと同じ電車で帰ることになったので途中までは楽しくおしゃべり。
 中松駅に到着し、ここから第二の目的地へ向かいます。

目的地②

 この時点で十一時前。自業自得とはいえ、睡眠不足と空腹で意外にもここから雨が堪えてきます。笑
 雨の中、小さい折り畳み傘を差して、昨日高千穂牧場で買っておいたパンを非常食がわりにムシャムシャと食べながら歩きます。熊本駅にキャリーを預けておいてよかったと思うと同時に、「歩いていたら暑くなるやろ。」という浅慮な考えで上着をキャリーと一緒にロッカーにしまったことによる体温低下に公開しつつ二十分歩きます。傘がなければパンは食べやすく、もっと美味しかったでしょうに笑

 そして到着。阿蘇白水龍神権現。凍えながらにやったぁと弱々し声に出ました。笑

 感想だけいうとめちゃくちゃよかったです。本当に良い意味でアクセスが良くなくて。人が少ない。でも神主さんや巫女さんはいらっしゃって。すごく整えられた神社でした。あたりには自然が広がっていましたが、森の中に神社があるわけでは無かったので、雨と風の影響をもろに受けながらの参拝で、楽しくもびちょぬれの参拝笑 生きた白蛇様にもお会いできました笑

そして幻へ

 と。非常に楽しく、心洗われ癒されたのですが。パンは食べども腹は減る。体温は上がらず、流石に雨の辛さがピークに。ただ、駅まで歩くしかない笑 帰りの方向的に中松駅へ戻るのではなく、南阿蘇水の生まれる里白水高原駅に行く方が時間的に待ち時間を減らせたのでそっちへ向かいます。

 しかしですね。行ったところで駅で四十分くらい待たないといけないんですよ。腹減るわ寒いわ眠いわ、こんな時ご飯屋さんでもあれば、腹も満たせて風もしのげて、その幸福の上待ち時間も過ぎるのに……と願いながらも。そんないい感じのお店無さそうで。田んぼと畑とそこに住む人たちの家が続いていました。

 もう、駅に着く。その時!地図にフォークとナイフの飲食店のマークが!『キッチンボルケーノ』さんの名前が出てきました。この人が多いとは言えない場所の、イマドキなのか、少し古いのかどっちとも取れる店名に、そもそも営業しているのか?と疑いを持ちました。
 で、歩きながら(人がいないので)定休日を調べて見ると。

営業時間外

 絶望。望みが絶えた瞬間でした。きっと背中には悲壮という文字が浮き出ていたことでしょう。

 
 そうは行っても仕方がない。と駅へ向かいます。悲しみを胸に(背中にも悲壮感)、駅に向けて最後の曲がり角を曲がるその直前、前方にはキッチンボルケーノさん。

 ん?

 あれ?

 看板、立ってる。

 え!営業してるっぽい!!!

 あっつ〜〜

 レッツゴーレッツゴー!ボルケーノ!ということで胸を弾ませ、スキップしながら天気とは裏腹に晴れ模様の表情でお店に直進。
 目の前に来ても間違いない。営業しとる。店内へ。

こだわり店主

 「いらっしゃいませ」

 と顔を出したのは、坊主頭の体格の良い店主。他にはスタッフはいない。店内には薪が置いてあり、キッチン前の大きな黒板にはピザやパスタ、カレーという文字。木造づくりの室内は暖色のライトで暖かさを感じました。
 適当な席に座ると、店主がおしぼりとお冷を持って来てくれました。
「ご注文決まりましたらお声かけください。」
と厨房に帰って行きました。
 テーブルにメニュー表はなく、大きい黒板のみのようです。そして黒板には「お食事のご注文、おひとり様おひとつとさせていただきます。」の文字。ほう、ドリンクだけなどはダメと。場所的にもしっかり食事までしないと売り上げが出ないのか。難しいんだろうな、経営って。と思いながら。店主の風貌からもこだわりの強いタイプだな!と睨みました。

 で。ここまではなかなか来れないしな。と。店主に声をかけて。
「旅行で熊本まで来ていて、なかなかここまで来れないんですが、こちらのオススメはなんですか。」
と伺ったところ、ミートパスタとのことだったのでミートパスタを注文させていただきました。

 寒さの中頑張ってくれた体を労わりながら待つこと数分。

 写真の撮り方が下手でわかりにくいかもしれないんですが。大盛りのミートパスタにパンがついて来て。これで料金千円いかないんですよ。やばくないですか笑

 そして。
「いただきます。」
満を辞して。疲れ切った体に、湯気を立てるパスタを口に運びます。
 凄まじく。驚くべきほどに。ありえないほどに美味。深みのあるミートソース。これまで食べた中で一番美味しいパスタでした。
 ミートパスタ。名前を疑いました。これはミートが入ったパスタか?いや、パスタが入ったミートじゃあないか。と思えるほどにたくさんのお肉が入っていました。それだけお肉が入っているにも関わらず!全くしつこくない!食えば食うほど食欲がそそられる。この時、この場所、このタイミング、どんぴしゃり。一番体が求めていたものがそこにはありました。本当に本当に。食に感謝をし、食こそが自身の体を作ってくれているんだと感謝しました。

 食後。一息ついて時計を確認。電車の時間まで良い時間帯になりました。暖かい雰囲気の店内に、内側からも熱くさせてくれる、気持ち高ぶる食事をいただき、身も心も満たしお会計へ。
「ごちそうさまでした。めっちゃくちゃおいしかったです!ありがとうございました!」
「それは良かった。こちらこそありがとうございます。」
こだわりの強いそっけないタイプかと思いきや、非常に親近感わく笑顔で。またここに来たい!なんならこの人のお店の常連になりたい!とそう思うほどに柔和な話し方に優しい笑顔でした。なので正直に。少し勇気を持って。
「なかなかここまでたくさんは来れないんですけど、ご飯も美味しくて、お店の雰囲気もとても良かったので、店内のお写真撮らせていただいていいですか。」
と。すると少し表情が暗くなり、
「……すみません。実は今日で閉店なんです。」

 ショックだった。また来たいを思えたお店にもう来れないのか。
 こういう時、なんて言ったらいいんだろう。「残念です。」「え、こんなに美味しいのに!」「なんでですか。」「また来たかったのにショックです。」

 どれもしっくりこない。残念なのはきっと店主ですよね。その時の一瞬で、ちゃんと後悔しない一言を選べたあの時の自分を褒めたい。
「そんな大切な日に、食べさせてもらってありがとうございました!こんなに美味しいご飯を食べられて嬉しかったです!」
店主にどう伝わったかはわかりませんが、僕の考える最良の言葉でした。

 あの日、あの時、あの瞬間。寒さと疲れと空腹の中、祈り。そして現れたあのお店。

 最初で最後の幻のミートパスタになりましたが、神様はいるんだなと。神様への感謝と。優しく、美味しいミートパスタを作ってくださった店主さんとそのご縁に感謝を。本当にありがとうございました。

余談

 閉店とわかって改めて考えると。本来営業していない日だったにも関わらず営業中だったことも。
 黒板に書かれた「食事は一人一品」というのは最低一品頼むこと!という意味ではなく、限られた食材のため一品までしか注文できないという意味だったことがわかりました。

 食べることができたミートパスタも、食べることができなかったピザやカレーも今となっては幻の一品。
 人生は選択の連続。そこに何があり、何を選ぶのかは自分自身で決めること(僕は店主さんに料理決めてもらいましたが笑)。

 皆様にもきっと、素敵なご縁がありますように。神様にも願っています笑

 ほな、この辺で。お休みなさい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました